ここ十年以上にわたって、あちこちのメディアにて、先見の妙がある思想家として再び脚光を浴びている歴史上の偉人がいる。カール・マルクスである。彼の思想の妥当性は、現在においても常々確認されるところとなっている。進歩主義的な論者たちの多くが、資本主義のオルタナティブを構築する上で、マルクスの思想は今なお不可欠だと考えている。世界中あらゆるところで、その思想をめぐって大学の講義や国際会議が再び催されるようになっている。マルクスの著作の復刻版や新版が、書店にまた並ぶようになった。このように、二〇年の長い休止期間を経て、マルクス研究は再び盛り上がりをみせつつあるのである。まさに「マルクス・リバイバル」と言えよう。
マルクスの総合性は人類知の非常に幅広い領域にわたっており、どんなに卓越した研究者でも、その頂上を推し量るのは容易ではない。こうした限界を認識しつつも、著者は研究成果を、さらなる研究の出発点として世に問いたいと考えている。
マルクスから学ばなければならないことは、未だ多く残されている。マルクスを学ぶにあたり、既によく知られた古典だけでなく、未完の草稿に含まれる問題点や疑問点を検討することができるのは、今を生きる我々の特権である。
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日本語版序文
はじめに
1. マルクス・リバイバル
2. 新しい思索に向けて
3. マルクスの著作の年表
第1部 知的形成過程と初期の論考
I. 子供の頃、青年時代、そして大学での勉学
1. 聖職者になりそこねて
2. トリーアの学校にて、そしてボンでの法学徒として
3. 敵の腕の中へ
4. ベルリンの青年ヘーゲル派として
II. 経済学との出会い
1. 十九世紀の首都・パリ
2. 古典派経済学と疎外された労働
3. 草稿と抜粋ノート――一八四四年の草稿
4. 哲学から革命の実践へ
第2部 経済学批判
III. 恐慌を待ちわびて
1. 経済学研究の継続
2. 孤独な亡命生活の中で
3. 一八五〇年から五三年にかけての研究ノート
4. 共産主義者の裁判とプライベートでの苦難
5. 恐慌についての『ニューヨーク・トリビューン』紙への寄稿
IV. 『経済学批判要綱』の頃
1. 一八五七年の金融恐慌と革命の時
2. 歴史と社会的個人
3. ロンドンで貧苦にあえぐ
4. 方法を求めて
5. 『要綱』を書きながら
6. ブルジョワ社会との戦い
V. カール・フォークトとの論争
1. 『フォークト君』
2. 貧困・病気との戦い
3. 「経済学」を待たせる一方…
4. ジャーナリスト活動と国際政治
VI. 『資本論』--未完の批判
1. 剰余価値の諸理論に対する批判的分析
2. 三巻本の執筆
3. 第一巻の完成
4. 決定版を追究して
第3部 政治的闘争
VII. 国際労働者協会の創立
1. うってつけの人材
2. 組織の発展と成長
3. 相互主義者の敗北
VIII. 一八七一年:パリの革命
1. アイルランドの自由のための闘争
2. フランス=プロイセン戦争への反対
3. パリ・コミューンによる権力の獲得
4. ロンドン大会における政治的転換
IX. バクーニンとの対立
1. インターナショナルの危機
2. マルクス対バクーニン
3. 二つの対立する革命論
第4部 最晩年の研究
X. 人生の煩わしさと新しい研究の地平
1. 「闘争!」
2. メイトランド・パーク・ロードの部屋
3. 人類学と数学の狭間で
4. 世界市民
XI. 国際政治とロシア論争
1. 農村共同体の未来について
2. 共産主義社会に至るためには資本主義を必ず経過しなければならないのか?
3. 別の道を進む可能性
XII. オールド・ニックの苦しみ
1. ヨーロッパで普及し始めた『資本論』
2. 人生の回転木馬
3. 妻の死と歴史学への回帰
XIII. モールの最後の旅
1. アルジェとアラブ世界の考察
2. 公国の共和主義者
3. 「それがマルクス主義であるならば、私はマルクス主義者ではない」
4. 最後の数週間
訳者あとがき
Marcello
Musto